siggraph asia 2018(2018.12.5-7)への参加

森光洋くんとsiggraph asia 2018(東京国際フォーラム)で展示してきました(2日目から、来年大学院に入る岡田くんも参加)。去年のバンコクに引き続き、2年連続の参加。

出展したプログラムは「VR/AR」。今年の応募状況は81件中20件の採択だというので、今年もなかなかの難関をくぐり抜けての名誉ある舞台です。

出展のかなったVR装置『self-umbrelling』(論文)は、傘をバサバサやることで幽体離脱みたいな感覚を体感するもので、もともとは今年の1月の「からだは戦場だよ2018」で初めて発表したものでした。ここ2年、「からだは戦場だよ」で発表したやつが、その年度内に、大きな舞台で公開されるという流れが続いており、思い入れのあるこの作品もその流れに乗ることができて本当に嬉しい。

一般的な国内会議のデモはだいたい2時間とか3時間で終わるところが、siggraph asiaでは、3日間、それも朝10時から夕方6時(最終日は4時)までぶっ通しで展示。それだけ多くの体験者と触れ合う機会が得られる反面、、、とにかく疲労困憊になる。初日はシステムのトラブルに加え、英語の15分のトークもあったので、ホテルに戻った時には身体がグダグダになっていた。

ただ、今年も3日間の展示を振り返って思うのは、siggraph asiaが、このレベルの労力を差し引いてもあまりある、極めて特別な場所だと言うこと。個々の出展物のレベルが高いことや展示空間の規模とかのロイヤリティーの側面はもちろんだけど、僕が今回すごく「よいな」と思ったのが、今年『self-umbrelling』を体験してくれた人たちの中で、去年のバンコクでの僕たちの展示(Stretchar(m)、Recursive Function Space)を体験していた人がかなりの数いたこと(ほとんどが外国の人)。去年のやつが面白かったからとまた来てくれた人とか、体験中に僕のアバターを見て思い出してゲラゲラ笑い出す人とか、とにかく何人もの人が去年の展示のことを覚えていて、少し苦笑気味に「お前たち去年もみたぞ。またこんなあやしいやつもってきたのか」みたいな感じで、話しかけてきてくれた。学生ボランティアも、2年連続で来ている子を数多く見かけた。この会議には、一度来たらまた次も来たくなるような、なんともいえない居心地のよさがあるのかもしれない。僕自身、たったの2年で、この会議に対してものすごい親近感を覚えてしまっていて、そんな自分に驚いている。

関連して、今回すごくうれしかったのは、こういう展示会の場で、<明確な意図>を持って「小鷹研」の展示を体験しに来る人が確実に増えていること(去年の体験者だけじゃなくて、VR系で有名なラボの学生とか、記者なんかも多い)。人口数人の小国、小鷹研の世界観がじわじわと人々の間に浸透しはじめているのを感じている。<じわりじわり>というのが大事。小鷹研は、大国に上り詰めることにはあまり関心を持っていないわけですが、ただ大国に不安を供給するそんな触媒でありたいとは思ってる。その意味で、まだまだみんな能天気にVR技術と戯れている。<自分>をますます肥大化させるためにVRを使っている。小鷹研による<じわりじわり>の歩みはまだ序の序の序。


以下は、本展示用に作った研究室のポストカード。結構気に入っている。


いつものことですが、展示のなかで体験者の多様なリアクション(体験中も体験後も)に触れることができたのは非常に有意義なものだった。毎度のことながら、外国の方が体験している時に「weird」(不気味)て言葉を拾えると、内心「よっしゃ」ってなる。『self-umbrelling』は、体験中の説明がとても大事で(重力反転という事態を当人に自覚させることで、途端に面白さが増す)、説明に慣れて来た2、3日目で、の体験者の反応はすこぶる良くなっていた。実は、siggraph系の会議に、こんな渋いやつ持って来て大丈夫かなぁ、っていう気持ちが少なからずあったんだけど、3日間の展示が終わった今となっては、自信を持って『self-umbrelling』を小鷹研の「代表作」と位置づけることができる。やっぱ、これ、すごくおもしろい。

以下は、twitterで拾えた反応。

「ゴリゴリのテクノロジーで殴るというより認知心理学的なアプローチが興味深かった!」という感想は非常に重要なポイントで、というのも、周りの傾向を見回してみれば、Siggraph系の会議がテクノロジーの先端性とCG表現のクオリティーの高さを重視していることは火を見るよりも明らかであり、その意味で、技術的な新規性を一切かえりみることのない小鷹研の展示物が2年連続で選ばれると言うのは(CGに関しては、今回も森光洋の技術力に全てを負っています)、端的に言って、本当によくわからないことなのだ。ただ、Program Comitteeのchairが僕たちの研究の姿勢に対する強い関心をわざわざ表明しにきたり、別の委員の方も査読で高評価だった(けれどrejctされた)「immigrant head」はアクセプトされるべきだったと言ってきたりで、小鷹研の独特な立ち位置が委員会のレベルでも静かに共有されている様子がなんとなしに伝わってきた。こうした状況について、すごく不思議な気持ちであると同時に、この方向でやっていくことに対してすごく自信を持つことができている。

来年はブリスベン。大好きな街だー。がんばろう。

p.s.
今回の『self-umbrelling』(Siggraph Asia 2018 Ver.)は、2019年1月12日にビッカフェ(からだは戦場だよ2018Δ)で体験することができます。

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