siggraph asia 2018(2018.12.5-7)への参加

森光洋くんとsiggraph asia 2018(東京国際フォーラム)で展示してきました(2日目から、来年大学院に入る岡田くんも参加)。去年のバンコクに引き続き、2年連続の参加。

出展したプログラムは「VR/AR」。今年の応募状況は81件中20件の採択だというので、今年もなかなかの難関をくぐり抜けての名誉ある舞台です。

出展のかなったVR装置『self-umbrelling』(論文)は、傘をバサバサやることで幽体離脱みたいな感覚を体感するもので、もともとは今年の1月の「からだは戦場だよ2018」で初めて発表したものでした。ここ2年、「からだは戦場だよ」で発表したやつが、その年度内に、大きな舞台で公開されるという流れが続いており、思い入れのあるこの作品もその流れに乗ることができて本当に嬉しい。

一般的な国内会議のデモはだいたい2時間とか3時間で終わるところが、siggraph asiaでは、3日間、それも朝10時から夕方6時(最終日は4時)までぶっ通しで展示。それだけ多くの体験者と触れ合う機会が得られる反面、、、とにかく疲労困憊になる。初日はシステムのトラブルに加え、英語の15分のトークもあったので、ホテルに戻った時には身体がグダグダになっていた。

ただ、今年も3日間の展示を振り返って思うのは、siggraph asiaが、このレベルの労力を差し引いてもあまりある、極めて特別な場所だと言うこと。個々の出展物のレベルが高いことや展示空間の規模とかのロイヤリティーの側面はもちろんだけど、僕が今回すごく「よいな」と思ったのが、今年『self-umbrelling』を体験してくれた人たちの中で、去年のバンコクでの僕たちの展示(Stretchar(m)、Recursive Function Space)を体験していた人がかなりの数いたこと(ほとんどが外国の人)。去年のやつが面白かったからとまた来てくれた人とか、体験中に僕のアバターを見て思い出してゲラゲラ笑い出す人とか、とにかく何人もの人が去年の展示のことを覚えていて、少し苦笑気味に「お前たち去年もみたぞ。またこんなあやしいやつもってきたのか」みたいな感じで、話しかけてきてくれた。学生ボランティアも、2年連続で来ている子を数多く見かけた。この会議には、一度来たらまた次も来たくなるような、なんともいえない居心地のよさがあるのかもしれない。僕自身、たったの2年で、この会議に対してものすごい親近感を覚えてしまっていて、そんな自分に驚いている。

関連して、今回すごくうれしかったのは、こういう展示会の場で、<明確な意図>を持って「小鷹研」の展示を体験しに来る人が確実に増えていること(去年の体験者だけじゃなくて、VR系で有名なラボの学生とか、記者なんかも多い)。人口数人の小国、小鷹研の世界観がじわじわと人々の間に浸透しはじめているのを感じている。<じわりじわり>というのが大事。小鷹研は、大国に上り詰めることにはあまり関心を持っていないわけですが、ただ大国に不安を供給するそんな触媒でありたいとは思ってる。その意味で、まだまだみんな能天気にVR技術と戯れている。<自分>をますます肥大化させるためにVRを使っている。小鷹研による<じわりじわり>の歩みはまだ序の序の序。


以下は、本展示用に作った研究室のポストカード。結構気に入っている。


いつものことですが、展示のなかで体験者の多様なリアクション(体験中も体験後も)に触れることができたのは非常に有意義なものだった。毎度のことながら、外国の方が体験している時に「weird」(不気味)て言葉を拾えると、内心「よっしゃ」ってなる。『self-umbrelling』は、体験中の説明がとても大事で(重力反転という事態を当人に自覚させることで、途端に面白さが増す)、説明に慣れて来た2、3日目で、の体験者の反応はすこぶる良くなっていた。実は、siggraph系の会議に、こんな渋いやつ持って来て大丈夫かなぁ、っていう気持ちが少なからずあったんだけど、3日間の展示が終わった今となっては、自信を持って『self-umbrelling』を小鷹研の「代表作」と位置づけることができる。やっぱ、これ、すごくおもしろい。

以下は、twitterで拾えた反応。

「ゴリゴリのテクノロジーで殴るというより認知心理学的なアプローチが興味深かった!」という感想は非常に重要なポイントで、というのも、周りの傾向を見回してみれば、Siggraph系の会議がテクノロジーの先端性とCG表現のクオリティーの高さを重視していることは火を見るよりも明らかであり、その意味で、技術的な新規性を一切かえりみることのない小鷹研の展示物が2年連続で選ばれると言うのは(CGに関しては、今回も森光洋の技術力に全てを負っています)、端的に言って、本当によくわからないことなのだ。ただ、Program Comitteeのchairが僕たちの研究の姿勢に対する強い関心をわざわざ表明しにきたり、別の委員の方も査読で高評価だった(けれどrejctされた)「immigrant head」はアクセプトされるべきだったと言ってきたりで、小鷹研の独特な立ち位置が委員会のレベルでも静かに共有されている様子がなんとなしに伝わってきた。こうした状況について、すごく不思議な気持ちであると同時に、この方向でやっていくことに対してすごく自信を持つことができている。

来年はブリスベン。大好きな街だー。がんばろう。

p.s.
今回の『self-umbrelling』(Siggraph Asia 2018 Ver.)は、2019年1月12日にビッカフェ(からだは戦場だよ2018Δ)で体験することができます。

人工知能学会全国大会(JSAI2018)のOS招待講演で発表します。

告知です。

まだ少し先になりますが、6月7日(木)、鹿児島県で開催される人工知能学会全国大会(JSAI2018)のオーガナイズド・セッション(「プロジェクション科学」の展開と発展)で、小鷹が招待講演で発表します。

講演の予稿が、以下のリンク先でPDFで公開されてます。

小鷹研理:「HMDによる構成的空間を舞台とした「三人称的自己」の顕在化」, 2018年度人工知能学会全国大会, 鹿児島(城山観光ホテル), 2018.6(Organized Session:「プロジェクション科学」の展開と発展)
[講演情報]
[PDFダウンロード]

予稿という位置付けではありますが、そこそこ濃いめの仕上がりになっているのではないかと。幽体離脱において生じている投射の特殊性を実験科学的な立場から整理するとともに、HMDが幽体離脱の特性を探る上で魅力的な道具となり得ることを、実例に即して解説しています。ぜひダウンロードしてご覧ください。


せっかく40分という長い講演時間をもらってるので、『からだは戦場だよ』とか『おとなのからだを不安にさせるからだ』あたりの、小鷹研独自の活動についても少し紹介できたらな、と思っています。ただ、話の中心は、幽体離脱と重力知覚の関係のところに置くつもりです。もっと言うと、幽体離脱を人工的に構成するうえで、重力知覚(の変調)という切り口がいかに魅力的であるかを、色々な角度から伝わればいいなと思ってます。とりわけ、前庭系が一人称視点の方向性を決定する上で重要な役割を果たしていることを種々の観点より解説しているBlankeのチームによるReview Article

Pfeiffer, C., Serino, A., & Blanke, O. (2014). The vestibular system: a spatial reference for bodily self-consciousness. Frontiers in Integrative Neuroscience, 8.
[原文]
[レコード・オブ・ジャーナル・レコーディング(小鷹研究室)]

は、今回の講演のテーマの基底を成す論文です。もちろん、今年の戦場で発表したSELF-UMBRELLING(下図)とも深く関係する、最近すすめているHMDを使った二つの重力反転実験で得られている小鷹研独自の知見も紹介していきます。


自分のような無法者に声をかけていただいた、青山学院大学の鈴木宏昭先生と北海道大学の小野哲雄先生の期待に応えれるよう、普段のテンションでいきます。よろしくお願いします。

なお、この講演が済んだら、そのまま南(東?)にスライドして、家族で屋久島に行って来ます。招待講演も屋久島もすごく楽しみ。
(小鷹)

Siggraph Asia 2017(2017.11.27-30)への参加

siggraph asia 2017へのVR装置の出品のため、研究生の森光洋くんと、はるばるバンコクまで行ってきました。
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発表したのは、幽体離脱的な体験を与える「Recursive Function Space」と、腕が伸びるような感覚を与える「Stretchar(m)」です。Stretchar(m)は、森くんの修論(身体各部の伸縮感覚の誘発)の最後の最後のところで、一緒に作ったやつです。

⬜︎ これらは、もともと、今年1月の「からだは戦場だよ2017」への出品というかたちで、(極めてローカルなエリアで)初めて発表したものなのですが、わずか10ヶ月ほどで世界的な舞台に辿り着いたことになります。
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⬜︎ Stretchar(m)については、今回のsiggraph asiaへの出展の直前のタイミングでプレスリリースを出したこともあって、いくつかの媒体が取り上げてくれています(現時点で、取材中のところもあります)。

⬜︎ 11月26日は一日中設営、
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その後、27・28・29日と、朝から夕方までひたすら展示。

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日本の学会でのインタラクション展示は、だいたい2時間くらいで終わるのが常なので、三日間ひっきりなし展示ブースに張りついて、新しいお客さんが体験に来られる、というのはとても新鮮でした。
ただ、初日の展示が終わった後、この調子でやっていたら僕も森くんも身体が壊れるな、と思って、二日目・三日目は、少し多めに休憩を取るようにしました。それで、意外と疲れなかったかな。

⬜︎ で、展示については大好評だっと思います。本当に。体験者の数も、(他と比べても)すごく多かったんじゃないかな。
Stretchar(m)は森くんの担当。三日間ずっと引っ張り合いっこしてました。時折叫び声が。

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RFSは僕です。一度体験した人に勧められて来る感じの人が多かったです。

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ほんと、みんな、こんな(↓)感じの反応です。だもんで、展示する側も飽きないし、楽しい。


以下は、twitterで拾えた反応。


バンコク滞在中、一切観光をせず(できず)、毎晩、ホテルと会場の間にある屋台に通ってました。おいしかったー。
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トムヤムクン、海老入りすぎ、パンチききすぎ、で三日目から胃が少し疲れてきた。

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EC2017(2017.9.16-18)への参加(UNITY賞もらいました)

はるばる仙台まで、EC2017(正式には、情報処理学会エンターテインメントコンピュティングシンポジウム、、長い)に、参加してきました。

Entertainment Computing 2017(公式HP)

持って行ったネタは、以下の3件。
小鷹研理, 森光洋:
Recursive Function Space: 左手を節、右手を葉とする再帰的視点変換によるメタ認知空間の探索,
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2017論文集 pp378-379, 東北大学, 2017.9.16(デモ発表)
石原由貴, 森光洋, 室田ゆう, 小鷹研理:
HMDを介したポールを引っ張り合うことによる腕が伸縮する感覚の誘発,
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2017論文集 pp380-382, 東北大学, 2017.9.16(デモ発表, プレミアム枠) UNITY賞
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室田ゆう, 森光洋, 石原由貴, 小鷹研理:
ELBOWRIST: HMDを用いた第二の肘を介した背面空間の探索,
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2017論文集 pp114-117, 東北大学, 2017.9.18(口頭発表 + デモ発表, プレミアム枠)
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例年、小鷹研究室のメディア系のデモは3月に行われるインタラクションに出展していたのですが、昨年度の小鷹研の主要な成果物である二つのHMDの仕事(『Recursive Function Space』、『Stretchar(m)』)が完成したのが年明けであったために、年末の締切に間に合わず、これまで、どこにも投稿できず、宙に浮いたままの状態でした。
しかしながら、『からだは戦場だよ2017』の様子を編集して公開した映像等で、

展示の記録と周辺|からだは戦場だよ2017(ブログ)

幸運にも、研究室の最近の仕事が、少なくない(その多くは美術系の)方々の目に止まり、そうした流れのなかで、まだどこにも発表していない『Recursive Function Space』(以下、RFS)が、文芸誌である『早稲田文学』のなかで、古谷利裕さんの論考で取り上げられる、、、

雑誌・早稲田文学の古谷利裕氏による論考のなかで
「Recursive Function Space」を取り上げてもらってます。(ブログ)

という、僕からすると、ちょっとびっくりするような局所的な盛り上がりを見せていました。てなもんで、、早く公式の場所で発表しないとなぁ、と思ったり(あるいは、もうそれなりの反応があったから発表しなくてもいいかと思ったり)。
Stretchar(m)は、森くんの修論の最後にオマケ程度にくっつけたもので、確かに『からだは戦場だよ2017』での評判はすごくよかったし(当時は『ポールを引っ張り合う、腕が伸びる』という風に仮で呼んでました)、

僕自身もその当時は興奮していたように思うのですが、新学期となって授業授業授業授業の日々なかで、精神の疲弊がすすみ、当時の興奮をキレイさっぱり忘れてしまっていったようなところもあり、まぁ、森くんも修士とって研究員という立場だし、お蔵でいいかな、、、というようなムード濃厚となっていたところ、、、
投稿を控えた7月に(何かのきっかけで)久しぶりに体験してみたところ、有無を言わさぬ「あ、これ、やっぱ、すげーじゃんね」が沸々と湧き上がり、絶対発表しないと後悔するわ、と思い直したのでした。それで、学術的な仕事の諸々から足を洗った森くんに変わって、論文の執筆・ポスターの構成や、投稿のための諸々のコーディネートを石原さんにお願いして、室田さんは勉強がてらサポート役ということで、僕も含めて、4人体制で投稿した、というのが事の経緯。
初日は、この二つのデモの初公開だったんですが、(僕が対応していた)RFSにはポツポツと濃ゆい人が集まって哲学談義に花を咲かせている、その傍らで、(森くんが対応していた)Stretchar(m)のブースは「ぎゃー」「うわー」「ひゃぁー」という感嘆の声が響き渡っており、というか、(おそらくは)既に体験した人たちの評判をききつけて、時間が経つに連れて続々と人が集まってきる、といった典型的なプチ祭り状態で、結果的に、歴代の小鷹研のデモの中でも、間違いなく最大級の盛り上がりを見せることとなっていたのです。で、まだ何の連絡も受けてないんだけど、公式HPによればUNITY賞という賞を受賞したようです本当に受賞してました。(本当のこというと、投票賞に届かなかったのが信じられなくって、、上から何番目だったんだろうか気になってる)。
Unity賞(Stretchar(m)、EC2017)
UNITY賞の趣旨はあまりよくわかっていないですが、とりわけCGのところで中心的な仕事をしてくれた森くんを讃えるうえで、これ以上なく、ふさわしい冠の賞なのだと思います。一方で、このSteretchar(m)は、UNITYだけじゃなくて、ProcessingとMax/MSPとWii-Boardが相互にネットワークでつながっている、いかにも小鷹研らしい、マルチモーダルな同期システムなのだ、ということも強調しておきたい。
あ、それと、もう一つ重要なことを言い忘れていたんだけど、Stretchar(m)は、2年前に小鷹研を卒業した曽我部愛子さんの「Underground Diver」(学科賞とった)を発展させて作ったものなんですね。ということで、なんだか、いろんなことが結果となって結びついてきており、嬉しいです。

初日、森くんの怒涛のデモ対応の後、第一著者の石原さんは、このとき名古屋市科学館、、


それと、RFSもStretchar(m)も、どちらも、11月下旬にバンコクで行われる『Siggraph Asia』のVR ShowcaseにAcceptされてます。これ、全国的に全く無名の弱小研究室としては、すごいことだと思うんです。本当に。てことで、森くんとバンコクで闘ってきます。英語苦手だけど。

Siggraph Asia 2017(公式HP)


こちらは、RFSのデモの様子


Stretchar(m)関連のツイート



Elbowrist
で、最後に、4年生室田さん中心のプロジェクトである『Elbowrist』について。
Elbowristについては、関連するツイートを並べておきます。今年の戦場では主力となるであろう、現在の小鷹研にとっては極めて重要で刺激的で挑戦的なプロジェクトです。ちなみに、『Elbowrist』の論文はプレミアム枠で採択されているんですが(Stretchar(m)もだよ)、4年生が書いた論文が、このようなかたちで高く評価されてる、ってのは本当にすごいことと思ってます。
で、肝心の発表ですが、もともとの予定では、三日目の午前中に口頭発表やってから、昼からデモ発表、終わり次第すぐに帰る、という慌ただしい1日となるはずだったのです。しかし、なんと、前日からの台風の影響で、口頭発表が吹っ飛んでしまい、結局、デモ発表を2時間くらいやっただけという(しかもデモ発表が遅れて開始された関係で、最後まで完遂できず、プレミアム枠の審査を受けることができなかった)、なんとも肩透かしな1日になってしまったのです。
当日の早朝、ホテルのロビーで、小声でやってもらった発表練習、最後の最後にきてかなり仕上がっていて、こんな質問がきたらこう返そうみたいな余裕まであったので、、だもんで、、このようなかたちで、彼女に晴れ舞台を用意できなかったことが、本当に残念でならない。。
それはそうとデモ発表は、RFS同様、大変に濃ゆい人たちが集まり、設計段階では全く無視していた諸々の気づきを得ることができたし、Elbowristが、学術的に見ても、非常に重要なポイントをついているということもわかりました。こちらに戻ってから、elbowristのことばかり考えてる。早く、室田さんと相談して、心理実験の計画を立てたい。

口頭発表で流す予定だった映像


デモ発表当日の様子


体験者の反応を踏まえて、考えたこと。



9月の小鷹研、いろいろやってます(認知科学会、EC、名古屋市科学館)。

9月の小鷹研、その1
  • 9月14日、JCSS2017(認知科学会)のOrganized Sessionで、小鷹が「HMDと身体」に関わる研究発表をしました。この論文PDFは事前よりHPで公開されており、少なくない方々に読んでもらっているようです。

論文のPDF

  • この論文では、まずは「何らかのイメージに自分を投射する」うえで、OwnershipとAgencyが果たしうる役割を考えています。両者とも感覚間共起性をベースに「自分」を外部へと投射するわけですが、Ownershipは、イメージに課されれる整合条件が強すぎるし、投射距離も短い。

  • Agencyはといえば、イメージはなんでもいいし、投射距離もどこまでもいける。空間的自由度は一気に上がるが、実は、Agencyは「0から身体を立ち上げることができない」。さらに、イメージに対してアクティブに関わらないといけない。関わり続けないといけない。。

  • 例えば、VR上でアバターに身体を投射したい場合、Ownershipでは近視眼的すぎるし(整合条件的に)対面できないし、一方で、Agencyでは、TVゲームのマリオで達成されていることと何ら変わらないわけです。せっかくHMDという新しい環境があるのだし、違う道を探りたい。

  • そこで、第三の道として「三人称定位」という位相を考えたい。この「三人称定位」では、対象に対してアクティブに関わる必要はないし、空間的自由度も外側から俯瞰できる程度には上がる。Ownershipほど強い「身体」ではないにせよ、そこに「自分が所属していること」が明確に「感覚」される。

  • このような位相を考えるうえで、幽体離脱(OBE)というある種の「認知モード」を手がかりにしたい。幽体離脱状態では、そもそも半数以上が自分の動きをコントロールできないから、PassiveなSelfを構成できるし、多様な視点から自分を俯瞰することもできる。距離の自由度も上がる

  • 確かに、幽体離脱は、OwnershipとAgencyでは要求されている、いくつかの空間条件、同期条件が課されないことは魅力的であるわけだが、、、他方、そもそも、何か「起動スイッチ」となっているのかがわからない。起動するための「新しい条件」というのを探らないといけない。。

  • 長くなったのでやめますが、こんな感じで、「HMD空間に身体を入れる」うえで、OwnershipともAgencyとも別の道を探るアプローチもあり得るのではないか、という提案がベースとなっており、その意味で、結構「大きい話」をしています。

  • 発表は、意外と反応がよかったです。オーガナイズした先生方からも大変ありがたい言葉をいただいたし、知能ロボティクスの浅田稔先生がたまたま聞きに来ていて(質問もしてくれた)、ロボットとownershipの研究の可能性について発表後にディスカッションできたのは、すごくラッキーだった。

  • 論文に関しては、画家で評論家の古谷利裕による偽日記の中でも取り上げていただいています。このポストのおかげで、僕の論文を、多くの人が読んでくれたみたいでうれしいです。ある種の「要約」として読まれるのもいいかもしれません。論文長いし。

偽日記へのリンク

9月の小鷹研、その2

https://twitter.com/kenrikodaka/status/908445660382355458

https://twitter.com/kenrikodaka/status/908446610408873985

9月の小鷹研、その3

発表|インタラクション2017

東京・明治大学中野キャンパスにて行われたインタラクション2017の最終日(2017.3.4)に参加し、 小鷹研究室の博士課程在籍中の石原由貴が、装置『動くラマチャンドランミラーボックス』 に関係する心理実験の内容について、口頭発表とインタラクティブ発表を行いました。
 
今回は、インタラクション参加5年目にして、小鷹研としては、口頭発表投稿への初めてのチャレンジとなりました。分野外のトピックでありながらも、査読者の手厚いサポートのもとなんとか採択をいただいています(採択率は43%だそうです)。
 
 
口頭発表は、ぼくも経験したことのないような広い会場で、事前の発表練習も微妙だったので、石原さん、大丈夫かなぁ〜、とドキドキしながら見守っていましたが、さすがですね。ちゃんと本番に合わせて仕上げてきました。あの場所で、あれだけ堂々と落ち着いて喋れていたのはすごいと思います。とはいえ、MVFになじみのない方々にとっては内容が把握しづらい点があったのも事実で、今後のいい課題となりました。
 
 
午後のインタラクティブ発表は、僕と、石原さんと、3年生の室田さんが説明員として参加して、装置も3台持っていくかたちで、盤石な態勢でのぞんだのですが、それでも、2時間以上ずっ〜と人の波が止まず、100人近い体験者の生の声を聞くことができました。あらためてインタラクションに参加することの意義を再確認したところです。
 
 
 
少なくない人が、装置のカラクリを説明した後であっても、鏡面背後の手が(錯覚としてではなく)「実際に物理的に」動いていると強く信じており、全く動いていない鏡面背後の手を実際に確認してもらって、驚いているのを見るのは面白かったです。ある人は、『自分が鏡を見ている時だけ、鏡面背後の手を秘密裏に動かしているのでは』と疑っていました。。
 
100人近い体験者のなかで、明確に錯覚の影響を受けない人は10人に満たない数でしたので、<動くラマチャンドランミラーボックス>は、小鷹研史上でも最大の錯覚装置ということになります。一方で、これですら感じない人の脳内に何が眠っているのか、ということを探りたいという気持ちは、これまで以上に高まっているところです。
 

論文を仕上げていく過程で、この研究が、従来のMVF(Mirror Visual Feedback)では掘り起こせなかった、かなり刺激的なポイントをついている、ということについて再確認しました。とりわけ、固有感覚(手の位置感覚)と視覚(によって捏造される固有感覚)の時間微分(=移動速度)がお互い矛盾している時に、どこに均衡点があるか、という切り口は、今後の錯覚研究においても、とても一般性を持つ論点となりうると思います。今回の実験の結果をざっくりいうと、現実ベクトルを覆すためには、4倍の量の(逆向きの)虚構ベクトルが必要である、ということです。

石原さん、この研究、すごく面白いんです。もう国内での発表は十分やったので、はやいところ国際ジャーナルへの準備を〜!!
 


石原由貴・小鷹研理:Mirror Visual Feedbackを活用した 鏡の移動による上肢の移動感覚の変調, 第21回情報処理学会シンポジウム・インタラクション2017, 明治大学, 2017.3.4(口頭発表) PDF

 

発表|国際心理学会議

2016.7.24-29に, 横浜パシフィコにて国際心理学会議において, 博士1年の石原さんがポスター発表を行いました.


Yuki Ishihara, Kenri Kodaka “Mirror visual feedback with movable mirror makes an illusory feeling of the hand movement“, the 31st International Congress of Psychology 2016 (ICP2016), Yokohama, poster presentation (Rapid Communication), 2016.7.29

Abstract

発表|認知心理学会第14回大会

2016.6.18-19に, 広島大学で開催された認知心理学会第14回大会において, 修士2年の森くんが口頭発表を行いました. 簡単に言うと, 「押す指」と「押される指」では, 後者の方が変形感覚を受け入れやすいというものです. お好み焼きおいしかったです(写真).


森光洋・小鷹研理:「押す-押される」の非対称性が身体伸縮感覚の誘発に与える影響, 日本認知心理学会第14回大会, 広島大学, 2016.6.18(O2 – 03), 口頭発表
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金澤綾香・小鷹研理:影による身体所有感の変調におけるモダリティーの効果, 日本認知心理学会第14回大会, 広島大学, 2016.6.18(O2 – 02)発表キャンセル
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発表|インタラクション2016

  
2016.3.2-3.4の三日間にかけて, 東京・科学技術館にて行われたインタラクション2016にて, 小鷹研究室から4点のインタラクティブ発表を出展しました(写真). 曽我部さんの腕伸びる作品がここでも好評で, (惜しくも賞を逃しましたが)一般投票で5番目の票を集めてます(Award).

森光洋・小鷹研理:自己接触錯覚の原理を用いた指が伸縮する感覚を誘発する装置の誘発, 第20回情報処理学会シンポジウム・インタラクション2016, 科学技術館, 2016.3.2(1B14) PDF

曽我部愛子・森光洋・小鷹研理:ぶら下がりによる自重変化を利用した腕が伸縮する感覚の誘発, 第20回情報処理学会シンポジウム・インタラクション2016, 科学技術館, 2016.3.3(2A03) PDF

小鷹研理・信田勇貴:I am a volleyball tossed by my hands: 二人称視点を採用した幽体離脱の誘発, 第20回情報処理学会シンポジウム・インタラクション2016, 科学技術館, 2016.3.4(3A09) PDF

金澤綾香・小鷹研理:垂直型投影環境における影と物体のインタラクション, 第20回情報処理学会シンポジウム・インタラクション2016, 科学技術館, 2016.3.4(3C74) PDF